「父との夏」上演によせて

ボク(三田村)は“ショーマ”を観ていなかったし、高橋いさをさんと話をしたこともありませんでした。二年くらい前、共通の知人の勧めでいさをさんが書いた新作を三田村組でやったらというお話しがあり、初稿を読ませて頂きました。

 この騒々しい時代にあって、静謐で、心温まる美しい作品でした。やろうと即決しました。しかし、この美しさが果たして芝居としてお客様に伝わるものなのか?遅ればせながら、“いさを”作品を三本見せていただき、何度かお会いしてお話させて頂きました。今までボクが出会ってきたどんな演劇人にも似ていないおっとりとした素直な、心優しい、がっしりとした身体をもつ二枚目でした。(二枚目半かな)

 この作品はこの人の書いた今までのどの作品とも違いました。この作家は素直な人柄と反する大フィクションをこれまで創り上げてきたのですが、この自伝的作品では、そのフィクションの幅を最小限にせざるを得なかった。そしてその結果、彼の本性が全て出てきてしまった。
そんな作品だと思います。
 しかし、それでも尚且つ、ボクはこの作品をなんとかドロドロとした生活感溢れるものに改竄してやろうと、あらゆる無理難題を彼に提出しました。こんなボクに対し、彼は「ああなるほど」とメモを取りながら、やはり素直に話を全て聞いてくれて、一年掛けて第三稿(決定稿)に至りました。それは実はドロドロではなく、トロトロと流れるように可愛らしく、穏やかなドラマとなりました。その過程で、髙橋いさをという正直者の真の意味での芯の強さを感じ、信頼感はより強固なものとなったのでした。

 そしてもう一つ、今回、この作品を企画したときに最初に考えたことは、いわゆる有名人や売れている役者ではなく、出来るだけ地味なメンバーでやりたいと思ったことです。そのため、キャスティングも一年以上前に決定し、最初の本読みも一年前にやりました。
なぜか。
 最近、どの小劇場、集団を観に行っても、チケット売上げ(集客)の為ではありますが、ちょっとしたスターを入れるのが常道になっております。実はその為にものすごく稽古時間が制約され、全員揃うの日が数日という様な舞台が目白押しです。(実は三田村組も多少やってますが…)
 それが舞台の質を下げているのは当たり前です。
 今回はジックリやります。

 この企画を発表してから、会う人ごとに髙橋いさをと三田村組という組み合わせに、驚きと期待がものすごく高いことに、ボク自身が驚かされています。
 どうぞご期待を、そして劇場に足を、ぜひお運び下さい。

2010-04-16 | Posted in ブログNo Comments » 

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